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チョコレートの正解は、五感に聞いてみて
──割る、香る、見る、とける夜
:Summer Valentine's Day Event
-カカオでときめく、夏のバレンタイン-

更新:2025/07/17(木)

チョコレートの正解は、五感に聞いてみて──割る、香る、見る、とける夜:Summer Valentine's Day Event -カカオでときめく、夏のバレンタイン-

2025年7月7日。GODIVA café Hibiyaにて開催された「Summer Valentine's Day Event -カカオでときめく、夏のバレンタイン-」。7月7日というと七夕だが、サマーバレンタインとして星に願いを込めてチョコレートでお祝いをする日でもあるとのこと。そんなサマーバレンタインに相応しく、チョコレートを愛するゲストの皆様と、しっとりとした夏の夜にイベントは行われた。

イベント開始前、まだ席が温まりきっていない空気の中で、ひとつ印象に残った風景がある。ゲストひとりひとりに、微笑みながら声をかけていく今回のイベントの語り手・佐野さんの姿だ。「素敵な自分時間をお過ごしくださいね。」そう話しかけられていたのは、お子さんをご主人に預けて、久しぶりの一人時間なのだと語るゲスト様。その一言だけで、場の空気がすっと和らぐ。イベントが始まるより前に、もうこの夜が「いい夜になる」と確信できてしまう、そんな空気感が確かにあった。

caféの入り口

果実だった、カカオのはじまり

佐野さんが手にしていたのは、カラカラと乾いた音を立てるカカオの実。カカオ豆を入れた瓶とともに、ゲスト様の席へと渡っていく。豆を作る段階で発酵するため、どこか酸味を感じる発酵臭をまとったカカオ豆。「梅干しの種のような匂いにも似てますよね」そう言って、佐野さんは笑う。
「カカオは、フルーツなんです。」乾燥した実の中に収まっているのは“種”であり、種は本来、ライチのような香りとグレープフルーツのような酸味をもった果肉(カカオパルプ)に包まれているという。チョコレートになる前のカカオに、そんな一面があることを、どれほどの人が知っていただろうか。チョコレートに至るまでの道のりは、思っていた以上に果実的で、生き生きとしたものだった。

五感のスイッチがひとつずつ開いていく

「今日は、チョコレートを味わい尽くしてもらう。」そのためには、五感を使ってチョコレートを楽しむことが肝要だと、佐野さんは語る。テイスティングに用意されたチョコレートは「カレ」と呼ばれる正方形の板チョコレート。ミルクチョコレート、ダークチョコレート50%、ダークチョコレート72%があり、今宵はこのチョコレートたちを食べ比べていく。

佐野さん

“音を聞いてから食べる”という、知られざる美学

「まず、チョコレートの音を聞いてみましょう。耳元で割ってみてください。」そう語る佐野さんの言葉に、ゲストの皆様は少し驚いた表情を浮かべていた。ミルクチョコレートから順番に。最初は音がしたかも曖昧だったチョコレートが、カカオの含有量が多くなるにつれ、パキッと硬い音に変わっていく。この音の違いは、チョコレートの溶けるスピードに関連しており、口に入れたときの香りや味わいの広がり方にも繋がっているという。食べる前の期待に、体温までほんのり上がったような気がした。

鼻、目、舌…その順で、甘さが沁みていく

まずは、ミルクチョコレート。「鼻の近くで封を開けてみてほしい。」と言われるがまま、封を開ける。開けた瞬間に、ふわりと広がる甘く香ばしい香り。鼻先で吸い込むだけで、もう胸のあたりがほどけるような感覚になる。
チョコレートの表面の“ツヤ”もまた、味わいのひとつ。きちんと温度管理され、理想的なテンパリングが施されたチョコレートは、なめらかに光を反射する。目で見る美味しさが、確かにそこにある。
そして、1/4ほどのサイズにそっと割る。舌の上へ。噛まずに溶かす。溶けはじめたチョコレートが、口の中に香りと甘さを広げていく。
その瞬間、佐野さんは。「目を閉じてみてください。」と優しく促す。言葉通りに目を閉じると、世界が静かになる。チョコレートと自分しか存在していないような、甘美な時間。
そして、アイスコーヒーをひと口。ミルクの甘みとコーヒーの苦味が混じり合い、まさに“マリアージュ”という言葉がぴったりの余韻が口の中に残る。

耳元で割るのチョコレート

目を閉じたとき、4000年前とも繋がっていた

目を閉じてチョコレートを味わう、という行為は不思議だ。ただ香りと温度と甘さに身を委ねるだけなのに、どこかで、「自分が何者で、今、何を求めているのか」に向き合ってしまう。
カカオが人類に親しまれ始めたのは、紀元前2000年ほど。時間にして4000~5500年*ほど前からという。固形のチョコレートが発明されたのは1847年という比較的近年ではあるが、長い時を経て親しまれてきたカカオにロマンを感じずにはいられない。遠い昔も、きっと誰かが同じように、祈るようにチョコレートを口にし、静かに目を閉じ、誰かへの想いにそっと触れていたのではないだろうか。
チョコレートの魅力は、ただの「甘さ」にあるのではない。その奥にある「時間」や「記憶」や「想い」に、私たちは惹かれているのかもしれない。
*諸説あります。

カカオ50%・72%──苦味じゃない、奥行き

続いて味わうのは、カカオ50%のチョコレート。ミルクが入っていない、ダークタイプだ。ツヤ感はより際立ち、香りの華やかさが鼻先をくすぐる。口に含むと、先ほどのミルクチョコレートとはまったく異なるスピード感で、ゆっくりと溶けていく。その変化の“遅さ”が、味わいの深さとして心に残る。チョコレートは「味」ではなく「変化」を味わうもの――そんな価値観すら生まれる。

さらに、カカオ72%。いわゆる“ハイカカオ”と呼ばれるラインだが、口にする前からその存在感は違っていた。指先で割ると、「パキッ」と硬く、はっきりと響く音。甘さを連想するというより、むしろ凛とした緊張感を感じさせた。溶けるスピードはさらにゆっくり。香りも味も、じわじわと自分の中に染み込んでいく。
「今までミルクチョコレートが好きだと思っていたけど、72%が一番美味しかった」そんな感想を語ってくれるゲスト様は一人だけではなかった。72%のようなハイカカオでは、ブランドごとの“個性”が際立つ。もちろん、ゴディバにも“ゴディバの味”がある。そしてその一貫性は、レシピというよりも、哲学に近いのかもしれない。

セットの手元写真

プラリネの“噛む楽しみ”──でも、楽しみ方に正解はない

最後に登場するのが、ハート型のチョコレート「クール」。中には、ゴディバが誇るプラリネ――香ばしくすりつぶされたヘーゼルナッツのフィリングが詰まっている。このチョコレートは、噛んでこそ本領を発揮する。噛むほどにチョコレートとナッツの両者が一体化し、味わいが変わっていく。
「板チョコレートのようなチョコレートは口の中で溶かしてあげる、フィリングの入ったチョコレートは噛んで楽しむ。」本国のシェフから直々に教わったチョコレートの楽しみ方だと言う。
「板チョコレートこそ、パキパキと噛んで食べるものだと思ってた」そんな声に、佐野さんは微笑んで「一番は、好きなように楽しむことです。」と答えていた。その言葉のやさしさに、このイベントのすべてが詰まっていた気がする。

会場

“味わう”ことは、“自分と向き合う”こと

イベントの最後に、佐野さんはこう言った。「七夕は、自分へのご褒美デーでもありますから。」誰かのために贈るのではなく、自分の心と身体のために味わう。それがサマーバレンタインの醍醐味だと、気づかされた夜だった。
好みで選ぶのではなく、“今の自分”の心にそっと耳を傾けて選ぶチョコレート。
たとえば、「あとひと頑張り」を支えてくれる甘さが欲しいときは、すっとなじむミルクチョコレート。
ほんの5分だけでも、自分だけの世界に沈みたいときは、ゆっくりと溶けていくダークチョコレート。
そんなふうに、自分の心の声に合わせてチョコレートを選ぶという贅沢を、佐野さんは教えてくれた。

サマーバレンタイン──冬のそれとは違って、熱くて、儚くて、少しセンチメンタルで。
でも、それが“夏の恋”らしくて、美しい。誰かを想ってもいいし、自分をねぎらってもいい。4000年の時を超えて、カカオは今日もそっと寄り添ってくれる。
帰り道、見上げた夜空が胸に染みるのは、きっとこの夜のチョコレートが、ただ美味しかっただけじゃなくて、“心の深いところ”に触れてくれたから。そんなふうに思えた。
チョコレートって、やっぱりロマンチックだ。
七夕の夜空が、静かに囁いているようだった。


佐野さん

語り手:佐野綾 プロフィール

本イベントで語り手を務めた佐野さんは、アルバイトとしてGODIVAに入社してから、20年以上にわたりゴディバ一筋で歩み続けてきたチョコレートの伝え手。
現在は店舗スタッフの育成を担当し、全国の新人スタッフに“チョコレートの楽しみ方”を語り継いでいる。今回のセミナーで披露された内容も、彼女が長年の経験をもとに編み出し、愛情を込めて受け継いできたものばかり。
“チョコレートの魅力を、まっすぐに、やさしく伝えること”。それを誰よりも大切にしている人である。



GODIVA café

GODIVA café

「毎日を、ちょっと良く」
ゴディバのチョコレートを使用したドリンクやパフェなどを楽しめるGODIVA café。東京駅、日本橋、日比谷、二子玉川、みなとみらいなどの店舗でお客様のご来店を心よりお待ちしております。

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チョコレート

ゴディバのチョコレートを深掘る

幸せなひとときを演出するゴディバのチョコレート。ベルギーで生まれ、世界中で愛され続けるプレミアムな味わいを、ぜひ大切な方へのギフトや自分へのとっておきの贈り物に。上質なカカオの風味と滑らかな口溶けを、ぜひご堪能ください。

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